人力舎、鬼ヶ島の和田によるブログみたいなやつ。


by deniro0817

~ぼくらの『アンナと名作』シリーズ~

『三匹の子豚 3』

狼の話はとても端的なものだった

「豚子さんの借金300万を

肩代わりして下さい。

無理ならば豚子さんを

喰らいます。」



予約していた人数が揃ったのを確認した

タキシードを着た店員が

予約していたワインを運んでくる。

久し振りの三匹の再開と

三匹の誕生日祝いにと

三匹が生まれた年のワインを

私が予約していたものだ。


狼は無言で豚子の為のグラスに

ワインを注いでいる。

どうやら狼は

これ以上話す事はないらしい。

そして

話し合う余地も与えてくれないらしい。


沈黙したテーブルの上に

三匹の為のワインを

大きな口に注ぎ込む音だけが響く。


その音を

痺れて動かなくなった

頭の奥の方で聞きながら

ぼんやりと狼を見つめていた。


グラスに入ったワインを

飲み終えた狼が

ゆっくりと席を立ちながら

大きな口を開く

「私は本当にどちらでもいいですよ。

少し話し合ってみて下さい。

トイレにでも行ってきます。」


狼がトイレに入ったのを確認すると

豚絵は右手で首の後をかきながら

少し上目使いで話しかけてきた。


「今本当にお金やばいんだよね。

来年に2号店をオープンする予定だし

来月のオーストラリア旅行も

今さらキャンセル出来ないし。

大丈夫だよね?

大体何をしたのか分からないけど

どうせ豚子が悪いんだから

豚子が自分で責任を取るべきだよ。

もう25歳なんだし。

お姉ちゃんも早く帰った方がいいよ。

何とかなるもんなんだから。」



豚絵は嘘をつく時に

首の後を触りながら

上目使いで話す。


どれが嘘なんだろう

金がやばいというのが嘘なのか

大丈夫と思っているというのが嘘なのか

私も帰った方がいいというのが嘘なのか

それとも全部嘘なのか


豚絵に尋ねようとしたが

話し終えると財布から

自分の分だけの会計をテーブルに置き

尋ねる暇なく店から出て行ってしまった。


多分全部嘘なんだろう。

そして多分私なら

『最終的に妹を見捨てられずに払ってくれる』

と思われているんだろう。

多分豚子もそう思っているのだろう。


何だか悔しいけど

結局私には店を出ていく事も

肩代わりを断る事も出来ないと思う。


自分の生真面目さに

タメ息をつきながら

ワインを飲む。


窓の外では雨が上がり

大きな虹が出ている。


もしかすると

豚絵と豚子はどこかから

少し安心した気持ちで

この虹を見てるかもしれない。


そう思った瞬間

胸に黒いモヤが広がり始めた。

つづく
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by deniro0817 | 2009-02-07 22:52 | 小説